本サイトでは”現役スポーツアナリスト”の「日々の学び」をブログとして残していきます。
こてこてのビジネス書だ。やはりビジネス書や新書(つまりアイデア)は大量に出回っているので、ひとしきり騒がれた後に長く読まれているものを読むよう心がけている。やはり古典というのには古典たりうる理由があるからだ。
あらすじ
アレックスは、ユニコ社ベアリントン工場の新しい所長として故郷に戻ってくる。しかし、その直後、工場の採算悪化から3ヶ月後の工場閉鎖を告げられる。
工場存続のため、身を粉にして働くものの、成果は出ず、自分と時間を過ごしてくれないことに怒った妻のジュリーは実家に帰ってしまう。公私ともにめちゃくちゃなそんなある日、空港で大学時代の恩師に出会ったアレックスは彼に意見を求める。
とまあ、こんな感じだがぶっちゃけあらすじはそんなに重要ではない。後述するTOCを導入する際のケーススタディというか具体例として物語が存在する。
エリヤフ・ゴールドラット
イスラエルの物理学者で、1984年に出版した『ザ・ゴール』はビジネス書として、今なお全世界で1000万人を超える読者がいると言われるベストセラーとなった。劇中に登場する物理学者のジョナは明らかに彼が自分自身をモデルにしている。
TOC : Theory of Constraints – 制約条件の理論
『ザ・ゴール』内でメインに取り上げられる理論。TOCとは「スループット」の向上を一番の目的に据えるオペレーションズリサーチ(戦略研究)とか経営工学みたいなもの。ちなみに私の大学院の研究室はオペレーションズリサーチの研究室でした。
部分最適では、ある工程の生産効率だけが向上し、その結果、工場全体の生産能力や全社の収益に全体の収益に繋がらない場合がある。そこで、スループットの最大化を目指すことで、全体最適を実現する。「真の変動費」とは、原材料や輸送費などの変動費のみで、原価計算では含める減価償却費や光熱費、労務費などのいわゆる工場経費は含めない。 また、「スループット会計」では、制約工程での単位時間あたりのスループットをもとに、収益性を判断する。
https://mba.globis.ac.jp/about_mba/glossary/detail-11842.html
つまりは純利益のようなもの。経費の削減や機械化などはあくまで、この変動費を抑えるためのもので、それ自体が目的になってはいけない、と作中では描かれる。
「スループット」の向上のために、「制約条件」(=「ボトルネック」)が何かを考え、その制約条件の効率を上げるとともに、他のプロセスを制約条件に合わせることで、キャッシュフローを最大化させる。
超ざっくり言うと、車を作るのに最初の部品がグズグズしてたら全ての工程が遅くなっちゃうよね、でもネジを焦って作って品質を落としたり、早く作るために過剰なお金使うのよもよくないよねって理論だと解釈している。
ボトルネックだけじゃないよ
『ザ・ゴール』は一見、工場運営の理論(TOC、後述)の紹介書籍に見えるのだが、もっと普遍的なテーマが裏に流れている。ネット記事でエリヤフ・ゴールドラットのインタビュー記事が書かれており、そこにあるコメントで非常に興味深いものがいくつかある。
どんな複雑なものでも、その難しいところをいったん単純化して、それが本来持っているシンプリシティというものを解き明かして説明する。そこには美しさがありますし、人はそれについての美しさとか単純さを賞賛するということです。
https://diamond.jp/articles/-/2401
物事をどうしても複雑にして解釈しようとしがちな私には耳が痛いコメント。同業者にもいっぱいそういう人います。Simple is betterだ。自戒を込めて。Simple is betterというと『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』を思い出します。
で、この『ザ・ゴール』で一番大切なことは物語を読む中で十分すぎるほど感じるが、終盤できちんと言葉になって出てくる。
私が探しているのは単にテクニックだけではなく、実は思考プロセスじゃないかってね
この思考プロセスとはつまり、
「何を変える」 = 問題設定
「何に変える」 = 解決方法
「どうやって変える」 = 解決方法の導入
ごくごく当たり前ではあるのだが、抽象化された概念はやっぱり全てに通づる。概念の抽象化が「学び」なのかもしれない。
最後の言葉にあるように、時に目の前の問題の答えを追い求めてしまいがちだ。そうではなく「思考プロセス」を手に入れたい、手に入れるように意識して本を読む、といったことが大切だし、意識していきたい。
ビジネス書の古典的名作ですので、上記の「思考プロセス」を意識しながら、ぜひ一読することをオススメします!