ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』【あらすじ完全解説】

自分の一番好きな本の一つにガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』がある。ただ、あまりにも難解な本のため人には紹介しづらいし、自分でもあらすじがよく分からなくなることがある。そこで、あらすじと自分なりの解説を残しておこうと思う。

概要

長い歳月が過ぎて銃殺隊の前に立つはめになった時、恐らくアウレリャーノ・ブエンディア大佐は、父親に連れられて初めて氷という物を見に行った、遠い日の午後の事を思い出したに違いない。

ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』

この冒頭の一文がかなり有名。

『百年の孤独』
作者: ガブリエル・ガルシア=マルケス (1927-2014)
出身国: コロンビア
発行年: 1967年

あらすじの前に池澤夏樹氏の言葉を引用します。

要約が無意味になるほどの無数の挿話からなり、そしてそれらが全体でフラクタルを成している。

池澤夏樹『現代世界十大小説』

と評しているわけですが、「あらすじが知りたいんだよ!」って声が多いと思う。私もそう思う。

と言うことで、ネタバレありで「各部」毎にあらすじを解説します。池澤夏樹氏の言う通り、ネタバレの意味がない小説であるが、せめて読んだ気になれるようにしたいと思う。各部の分け方は完全に主観なので、もっと良い分け方があったら教えてください。

一つ注意事項は、同じ名前の登場人物が「第◯世代」として複数人出てくることです。

作者紹介 – ガルシア・マルケス

1927年に人口2000人ほどの村で生まれたガルシア・マルケスは、両親が離別したため、祖父母と3人の叔母と暮らすことになる。
この幼少期に聞いた村の伝承が作風や物語に影響を与えたとされており、特に退役軍人であった祖父は、マコンドを描いた作品に何度か登場する「大佐」や「アウレリャノ・ブエンティア大佐」のモデルとなったと言われている。
高校在学中から執筆活動をしており、卒業後1947年にコロンビア大学法学部に入学した。1948年の保守党派対自由党派の政治紛争(ボゴタ暴動)により学校が閉鎖されたマルケスは、別の大学に編入するも生活難により退学する。その後、政治的事情で各地を転々としながら記者として働く一方、執筆活動を続け、1967年に『百年の孤独』を発表。「ソーセージのように売れ」、ベストセラーとなり、1982年にこの功績を評価されてノーベル文学賞を受賞した。

第1部 – マコンド、創設

主な登場人物

ブエンディア家
ホセ・アルカディオ・ブエンディア(ホセ・アルカディオ①)
ウルスラ・イグアラン(ウルスラ)
ホセ・アルカディオ(ホセ・アルカディオ②)
アウレリャノ・ブエンディア(アウレリャノ①、大佐の少年時代)
アラマンタ

その他
メルキアデス
ピラル・テルネラ

あらすじ

いとこ同士であった、ホセ・アルカディオとウルスラ・イグアランは近親相姦によって「豚のしっぽを持った子生まれる」という周囲の反対を押し切り結婚する。ある日、軍鶏に負けたプルデンシオ・アギラルに夫婦生活を侮辱され、ホセ・アルカディオは彼を殺してしまう。死んだプルデンシオの亡霊から逃げるため、ホセ・アルカディオは山越えを決意する。
リオアチャから遥か西の山奥に「マコンド」という村を創設する。ここで、ホセ・アルカディオ・ブエンティアはジプシーのメルキアデスに出会う。メルキアデスは磁石やレンズ、天文学といった文明をマコンドにもたらし、それに感化されたホセ・アルカディオは村と外部を繋ぐ道を模索する。その道中、なぜか野原の奥深くにある巨大なスペインの帆船を見つける。そして、一行はついに魔の土地を抜けるが、抜けた先は海であり、半島だと思われていたマコンドがそうでなかったことに気づく。一方、妻のウルスラはアウレリャノ・ブエンディア(少年時代)が予知能力を持っていることに気づく。村に新しいジプシーが来て、メルキアデスの死を知らせる。ホセ・アルカディオは見世物小屋に子供達を連れて行き、アウレリャノ・ブエンディアはそこで初めて氷に触れる。
成長したホセ・アルカディオは占い師のピラル・テルネラと関係を持つようになり、ウルスラはアラマンタを出産する。ピラル・テルネラはホセ・アルカディオの子供を身籠もるが、ホセ・アルカディオは村にやってきた新しいジプシーと一緒に消え去ってしまう。
ウルスラはホセ・アルカディオを捜索するために5ヶ月もの間行方不明になる。帰ってきたウルスラは、かつてホセ・アルカディオ・ブエンディアが見つけることのできなかった、マコンドと「文明」をつなぐ道を偶然発見して帰ってくる。

長い歳月が過ぎて銃殺隊の前に立つはめになった時、恐らくアウレリャーノ・ブエンディア大佐は、父親に連れられて初めて氷という物を見に行った、遠い日の午後の事を思い出したに違いない。

ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』

第2部 – ホセ・アルカディオ・ブエンティア、気が触れる

主な登場人物

ブエンディア家
ホセ・アルカディオ・ブエンディア(ホセ・アルカディオ①)
ウルスラ・イグアラン(ウルスラ)
アウレリャノ・ブエンディア(アウレリャノ①、大佐の少年時代)
アラマンタ
アルカディオ(ホセ・アルカディオ③)
レベーカ
レメディオス

その他
メルキアデス
ピラル・テルネラ
ピエトロ・クレスピ

あらすじ

ピラル・テルネラは男の子を出産し、ホセ・アルカディオと名付けられ、アルカディオと呼ばれるようになる。伝染性の不眠症から逃げてきたインディオの姉弟が住み込みの家事手伝いとしてブエンティア家で暮らし始める。また、ウルスラのまたいとこらしい人物から、レベーカという孤児が送られる。レベーカが不眠症の兆候を示し、インディオの弟はマコンドから逃げ、村の間で瞬く間に不眠症が広がった。ある日、メルキアデスがホセ・アルカディオを訪ね、村人は不眠症から回復する。その後、メルキアデスはブエンディア家で暮らすようになる。
それからしばらくして、政府から任命されたドン・アポリナル・モコステが町長として、兵隊を連れてマコンドにやってくる。マコンドの自治を訴えるホセ・アルカディオ・ブエンディアと一緒に町長を訪ねたアウレリャノ・ブエンディアは、町長の娘で9歳になったばかりのレメディオスに一目惚れする。
一人前の娘となったアマランタとレベーカのためにパーティが催され、2人ともピエトロ・クレスピに恋をするが、レベーカと婚約する。アウレリャノ・ブエンディアはレメディオスと再会するが、より恋しくなってしまい、代わりにピラル・テルネラと一夜を過ごす。その後、ピラル・テルネラの助言でレメディオスに求婚する。メルキアデスがまた死んで水銀で煮込まれる。
ホセ・アルカディオ・ブエンティアは亡霊となったプルデンシオ・アギラルとメルキアデスと再会し、気が触れる。ウルスラはホセ・アルカディオ・ブエンディアを中庭の栗の木に縛る。

墨をふくませた刷毛で<机><椅子><時計><扉><壁><寝台><平鍋>という具合に、物にいちいち名前を書いて行いった。裏庭へ出かけて、<牝牛><仔山羊><豚><雄鶏><タピオカ><山芋><バナナ>というように、動物や植物にもその名前をかきつけた。

ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』

第3部 – アウレリャノ・ブエンディア大佐、誕生

主な登場人物

ブエンディア家
ホセ・アルカディオ・ブエンディア(ホセ・アルカディオ①)
ウルスラ・イグアラン(ウルスラ)
アウレリャノ・ブエンディア(アウレリャノ①、大佐の青年時代)
ホセ・アルカディオ・ブエンディア(ホセ・アルカディオ②)
アラマンタ
アルカディオ(ホセ・アルカディオ③)
レベーカ
レメディオス
アウレリャノ・ホセ(アウレリャノ②)

その他
メルキアデス
ピラル・テルネラ
ピエトロ・クレスピ

あらすじ

アウレリャノ・ブエンティアとレメディオスが結婚する。式のために訪れたニカノル神父が空中浮遊を見せ、ホセ・アルカディオ・ブエンティアだけがその理屈を知っている。
ピエトロ・クレスピとアマランタはトラブル続きでなかなか結婚できない。そんな中、レベーカアはアマランタの不幸を祈っていると、レメディオスが自家中毒で死んでしまい、レベーカは落ち込む。ピラル・テルネラとアウレリャノ・ブエンディアの子供がブエンティア家に送られ、アウレリャノ・ホセと名付けられる。
大男になったホセ・アルカディオがマコンドに帰って来る。ピエトロ・クレスピへの恋心を忘れ、ホセ・アルカディオに惚れたレベーカはホセ・アルカディオと結婚する。振られたピエトロ・クレスピはアマランタと婚約を結ぼうとするが断られる。
アリリオ・ノゲーラ医師を訪ねたアウレリャノ・ブエンディアは、彼が元テロリストであったことを知。保守政権打倒については同意したものの、アウレリャノ・ブエンティアはすぐには行動を起こさなかった。しかし、自由主義対保守政権の戦争が勃発し、マコンドを占領した兵隊にアリリオ・ノゲーラやニカノル神父が殺害される。戦争勃発から二週間経ったある日、アウレリャノ・ブエンディアはクーデターを起こして占領軍を殺害し、「アウレリャノ・ブエンディア大佐」と名乗り始める。

戦争ですよ。二度とぼくを、アウレリノと呼ばないでください。今ではぼくは、アウレリャノ・ブエンディア大佐なんです。

ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』

第4部 – アルカディオ、死す

主な登場人物

ブエンディア家
ホセ・アルカディオ・ブエンディア(ホセ・アルカディオ①)
ウルスラ・イグアラン(ウルスラ)
アウレリャノ・ブエンディア大佐(アウレリャノ①)
ホセ・アルカディオ・ブエンディア(ホセ・アルカディオ②)
アラマンタ
アルカディオ(ホセ・アルカディオ③)
レベーカ
アウレリャノ・ホセ(アウレリャノ②)
サンタ・ソフィア・デ・ラ・ピアダ

その他
メルキアデス
ピラル・テルネラ
ピエトロ・クレスピ

あらすじ

アウレリャノ・ブエンディア大佐は反乱を繰り返す中で、革命軍総司令官に上り詰めた。アウレリャノ・ブエンディア大佐からマコンドの自治を任されたアルカディオは、残忍な支配者となり侮辱してきた村人を殺害する。それを見たウルスラは、アルカディオに激怒し、彼に代わって彼女が町の統治者となる。その頃、いつまでも結婚してくれないアラマンタにしびれを切らしたピエトロ・クレスピは手首を切って自殺する。アルカディオは自分の親と知らず、ピラル・テルネラに関係を迫り、ピラル・テルネラは代わりにサンタ・ソフィア・デ・ラ・ピアダを彼の元に送る。
老婆に扮した自称スティーブンソン大佐がマコンドにやってくる。彼はアウレリャノ・ブエンディア大佐の作る金の魚細工を持っており、マコンドを保守党政権軍に明け渡すよう言われる。アルカディオはこれを拒否して戦うが負ける。彼は軍事裁判にかけられ、処刑される前に、息子にはホセ・アルカディオという名前をつけるよう妻に伝えてくれという。処刑直前に娘にはレメディオスと名付けるよう伝えるのを忘れていたことを思い出したが、時すでに遅く「自由党、万歳!」と言い残して銃殺隊に処刑される。

腰抜けめ!自由党、万歳!

ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』

第5部 – ホセ・アルカディオ・ブエンディアやっと死す

主な登場人物

ブエンティア家
ホセ・アルカディオ・ブエンディア(ホセ・アルカディオ①)
ウルスラ・イグアラン(ウルスラ)
アウレリャノ・ブエンディア大佐(アウレリャノ①)
ホセ・アルカディオ・ブエンティア(ホセ・アルカディオ②)
アラマンタ
レベーカ
アウレリャノ・ホセ(アウレリャノ②)
サンタ・ソフィア・デ・ラ・ピアダ
レメディオス(小町娘のレメディオス)
ホセ・アルカディオ・セグンド(ホセ・アルカディオ④)
アウレリャノ・セグンド(アウレリャノ③)

その他
ヘリネルド・マルケス大佐

あらすじ

戦争が終わり、アウレリャノ・ブエンディア大佐は捕まる。死刑を宣告されたアウレリャノ・ブエンティアは遺言として「判決の執行はマコンドでやってもらいたい」と答え、表向きは街の見せしめとしてマコンドで死刑が行われることとなる。
死刑執行の瞬間、ロケ・カルニセロ大尉とホセ・アルカディオが銃殺隊を殺し、大佐は脱走、戦争が再開した。大佐の神出鬼没の行動に関する行動が伝説となっていく中、遂にリオアチャを陥落する。
ウルスラはサンタ・ソフィア・デ・ラ・ピアダとその子供を引き取り、屋敷が子供で溢れかえっていた。女の子にはレメディオスという名前を、双子の男の子には、ホセ・アルカディオ・セグンド、アウレリャノ・セグンドと名付ける。
ホセ・アルカディオとレベーカは、アウレリャノ・ブエンディア大佐の逃亡から一年後、アルカディオの建てた家へと引っ越す。ある日、ホセ・アルカディオが寝室のドアを閉めた瞬間に家中にピストルの音が響き渡り、ホセ・アルカディオは殺され、この真実はマコンドで明らかにされることはなかった。彼の血は、ブエンティア家にたどり着き、ウルスラに死を知らせる。ウルスラが彼の寝室を訪ねると、火薬の臭いが死体から発せられ、それは何をしても消えることはなかった。死体が運び出されると同時に、レベーカは家の戸を全て閉ざし、生き埋めさながらの生活をするようになり、それ以来召使いのアルヘニダを除いて彼女と接触した人間は一人もいなかった。
アウレリャノ・ブエンディア大佐がマコンドに凱旋する。ある日、馬を殺せるほどの毒が入ったコーヒーを飲んでしまうが、一命を取り留める。ヘリネルド・マルケス大佐がアマランタに恋心を抱いていることが明らかになるが、アマランタはそれを一切拒否する。
ある日、アウレリャノ・ブエンディア大佐からホセ・アルカディオ・ブエンディアが死ぬという手紙が来る。ホセ・アルカディオ・ブエンティアはプルデンシオ・アギラルと話しているうちに、間違えて死者の世界に腰を据えてしまい、死ぬ。マコンドに不眠症が流行った時、ブエンティア家から逃げ出したインディオの弟カタウレがマコンドを訪れる。彼は「王様の埋葬に立ち会うためだよ」と告げる。葬儀の準備をする中、街には黄色い花の雨が降る。

ひと筋の血の流れがドアの下から洩れ、広間を横切り、通りを出た。でこぼこの歩道をまっすぐに進み、階段を上り下りし、手すりを這いあがった。トルコ人街を通りぬけ、角で右に、さらに左に曲り、ブエンティア家の正面で直角に向きを変えた。閉まっていた扉の下をくぐり、敷物を汚さないように壁ぎわに沿って客間を横切り、さらにひとつの広間を渡った。大きな曲線を描いて食堂のテーブルを避け、ベゴニアの鉢の並んだ廊下を進んだ。アウレリャノ・ホセに算術を教えていたアマランタの椅子の下をこっそり通り過ぎて、穀物部屋へしのび込み、ウルスラがパンを作るために三十六個の卵を割ろうとしていた台所にあらわれた。

ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』

第6部 – むなしき戦争

主な登場人物

ブエンディア家
ウルスラ・イグアラン(ウルスラ)
アウレリャノ・ブエンディア大佐(アウレリャノ①)
アラマンタ
レベーカ
アウレリャノ・ホセ(アウレリャノ②)
サンタ・ソフィア・デ・ラ・ピアダ
レメディオス(小町娘のレメディオス)
ホセ・アルカディオ・セグンド(ホセ・アルカディオ④)
アウレリャノ・セグンド(アウレリャノ③)

その他
ピラル・テルネラ
ヘリネルド・マルケス大佐
コロネル神父
モンガダ将軍

あらすじ

アマランタとアウレリャノ・ホセは隠れて愛撫しあう関係を持つようになるが、ウルスラにキスしようとしていた現場を見られる。アマランタはアウレリャノ・ホセとの関係を断ち、アウレリャノ・ホセは風俗に通うようになる。ある日、アウレリャノ・ブエンディア大佐は極秘でマコンドを訪れ、アウレリャノ・ホセは彼と一緒に旅立つ。戦争の中、保守党に占領されているマコンドの町長には、アウレリャノ・ブエンティア大佐の良き友人であり、一番の敵であるモンガダ将軍が就き、コロネル神父がニカノル神父と交代する。
戦争の中、アマランタを求めて、アウレリャノ・ホセが前線を脱走してマコンドに帰ってくる。また振られるものの、すぐ立ち治った彼はピラル・テルネラの元に居つくようになる。その頃、ブエンディア家に、アウレリャノ・ブエンディア大佐の子を名乗る子供が17人やってくる。劇団を観に来たアウレリャノ・ホセは保守党が行なっている身体検査に対し、丸腰なのに急に駆け出す。それを見た保守党の人間は彼を射殺し、通り行く人々がめいめいの弾丸を撃ち込み、死体はスープに浸ったパンのようになる。
極秘裏に祖国に帰ってきていたアウレリャノ・ブエンディア大佐はマコンドを保守党から取り戻し、良き友でもあるモンガダ将軍を処刑する。

「この調子でいくと」と将軍は付け加えた。「あんたは、わが国の歴史はじまって以来の横暴かつ残忍な独裁者になるだけじゃない。」

ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』

第7部 – アウレリャノ・ブエンディア大佐、復活

主な登場人物

ブエンディア家
ウルスラ・イグアラン(ウルスラ)
アウレリャノ・ブエンディア大佐(アウレリャノ①)
アラマンタ
レベーカ
サンタ・ソフィア・デ・ラ・ピアダ
レメディオス(小町娘のレメディオス)
ホセ・アルカディオ・セグンド(ホセ・アルカディオ④)
アウレリャノ・セグンド(アウレリャノ③)

その他
ピラル・テルネラ
ヘリネルド・マルケス大佐
コロネル神父

あらすじ

ヘリネルド・マルケス大佐はアマランタに思いを伝えるが、アマランタはそれを断る。アウレリャノ・ブエンディア大佐がマコンドに帰って来るが、3メートル以内に人を近寄らせない。
マコンドに戻る前のこと、アウレリャノ・ブエンディア大佐はモンガダ将軍の未亡人に形見の品々を渡すが、モンガダ夫人はアウレリャノ・ブエンディア大佐を家に入れない。すると、大佐の警護に当たる連中が未亡人の家を略奪し、焼き払った。別の日には、反乱軍の指揮官を集めた会議の中で総司令官の地位についたバルガス将軍を、指示を出してもいないのに配下の者が殺害し、アウレリャノ・ブエンディア大佐は全軍の指揮をとることになる。絶大な権力にともなう孤独の中で、眠れないほどの悪寒を感じ始め、同じことを繰り返し続ける戦争に嫌気を感じ始める。保守党が条件付きの和平を求めて来る。その条件は自由党の思想と違うものにも関わらず、アウレリャノ・ブエンディア大佐は政権獲得こそ戦争の目的だと主張し、停戦を受け入れようとする。アウレリャノ・ブエンディア大佐は意見に反対したヘリネルド・マルケス大佐は反逆罪で捕まり、死刑を宣告する。死刑直前、ヘリネルド・マルケス大佐を死刑から救い、戦争を終わらせるために、ヘリネルド・マルケス大佐と共に、政府軍の力を借りて和平に反対する自由党の将軍たちを鎮圧した。
こうして、アウレリャノ・ブエンディア大佐はマコンドに帰郷する。大佐は身の回りの物品を全て捨て、和平の調印式に向かう。調停後自殺を図るが失敗し、再び昔の声望を取り戻し、年金問題をきっかけに再び反乱を起こそうとする。しかし、アウレリャノ・ブエンディア大佐以外の自由党の指導者も含め、厳重に監視され始める。

死こそ最良の友、さ。

ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』

第8部 – アウレリャノ・セグンド、メルキアデスに出会う

主な登場人物

ブエンディア家
ウルスラ・イグアラン(ウルスラ)
アウレリャノ・ブエンディア大佐(アウレリャノ①)
アラマンタ
レベーカ
サンタ・ソフィア・デ・ラ・ピアダ
レメディオス(小町娘のレメディオス)
ホセ・アルカディオ・セグンド(ホセ・アルカディオ④)
アウレリャノ・セグンド(アウレリャノ③)
フェルナンダ・デル=カルピオ

その他
ペトラ・コテス
ピラル・テルネラ
ヘリネルド・マルケス大佐
アントニオ・イザベル神父

あらすじ

ホセ・アルカディオ・セグンドとアウレリャノ・セグンドは思春期を迎えるまで瓜二つで、誰も彼らを見分けられず、また頻繁に入れ替わった。結局、ホセ・アルカディオ・セグンドに落ち着いた方は大佐そっくりのやせすぎな男になり、アウレリャノ・セグンドは祖父によく似た大男になった。ある日、ホセ・アルカディオ・セグンドが銃殺を見に行った時、アウレリャノ・セグンドはメルキアデスの遺体があった部屋に入り、それ以来メルキアデスの草稿の解読をはじめ、またメルキアデスに出会う。一方、銃殺された人間が死ぬ前に生き埋めにされているのを目の前で見た、ホセ・アルカディオ・セグンドは衝撃を受け協会に足を運ぶようになる。そして、神父に軍鶏を教わったホセ・アルカディオ・セグンドはその腕前を発揮し始める。
アウレリャノ・セグンドはペトラ・コテスという娼婦と関係を持ち始め、その辺りからペトラ・コテスの強運で何もしていないのに、嘘のように家畜が増え、大金持ちになった。アウレリャノ・セグンドが騒ぐ中、ウルスラは200キロ近い金貨を発見し、中庭に埋める。ホセ・アルカディオ・セグンドはマコンドと外の街の間での海運を成功させる。
小町娘のレメディオスは絶世の美女になっており、純潔な心を持っているが浮世離れしている。彼女の美貌に惚れた男たちの中に、恋心のあまり死ぬものが現れ始める。そんな中、レメディオスとフェルナンダ・デル=カルピオを女王にしたカーニバルの中で、謎のテロが発生し、40人弱が死ぬ。アウレリャノ・セグンドはフェルナンダを助け、その縁で結婚する。フェルナンダとの間に生まれた子供をホセ・アルカディオと名付け、ウルスラは彼を法王にしようと決める。

牝馬は三児を、雌鶏は日に二度も卵を産んだ。豚もまたとめどなく太っていくので、魔法ならばともかく、この異常な繁殖ぶりの理由を納得できた者は一人もいなかった。

ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』

第9部 – 開「村」と侵入者

主な登場人物

ブエンディア家
ウルスラ・イグアラン(ウルスラ)
アウレリャノ・ブエンディア大佐(アウレリャノ①)
アラマンタ
レベーカ
サンタ・ソフィア・デ・ラ・ピアダ
レメディオス(小町娘のレメディオス)
ホセ・アルカディオ・セグンド(ホセ・アルカディオ④)
アウレリャノ・セグンド(アウレリャノ③)
フェルナンダ・デル=カルピオ
ホセ・アルカディオ(ホセ・アルカディオ⑤、法王見習い)
メメ(レナータ・レメディオス)

その他
ペトラ・コテス
ピラル・テルネラ
ヘリネルド・マルケス大佐
アントニオ・イザベル神父

あらすじ

アウレリャノ・セグンドは結婚後もペトラ・コテスと関係を持ち続ける。フェルナンダは、育ちの良さから自分の家のルールをブエンティア家に持ち込み、ウルスラはそれを嫌がる。そんな彼女の家からは、毎年贈物が届き、ある日父親ドン・フェルナンドの死体が棺に入って送られて来る。
アウレリャノ・ブエンディア大佐は和平調停を讃えられて、式典に呼ばれるが参加しない。そんなある日、かつて洗礼したアウレリャノ・ブエンディア大佐の息子達、17人のアウレリャノがマコンドにやってくる。彼らは教会で額に灰の十字のしるしをつけられる。17人の1人、アウレリャノ・トリステはレベーカと偶然出会い、ブエンティア家の人々は彼女のことを思い出す。フェルナンダは長女に、レナータ・レメディオスという名前をつけ、彼女はメメと呼ばれるようになる。
その後、アウレリャノ・トリステはマコンドに鉄道を開通させる。かつてのジプシーが来た時のようにマコンドの外からあらゆるものが流入し始める。気球は売れない。
マコンドに住み着いた移民は隣に電流の通った金網で囲まれた別の街を作り、バナナを栽培し始める。小町娘のレメディオスはバナナ熱にかからず、天真爛漫に過ごし、そんな彼女への恋心をこじらせて死ぬ若者が続出する。4人が死んだあたりで、小町娘のレメディオスには死を呼ぶ力があるという噂が憶測を超え始める。そして、三月のある日の午後、レメディオスはシーツに包まれて昇天する。
彼女はシーツに抱かれて舞い上がり、黄金虫やダリヤの花の漂う風を見捨てて、午後の四時も終わろうとする風のなかを抜けて、もっとも高く飛ぶことのできる記憶の鳥でさえおっていけないはるかな高みへ、永遠に姿を消した。
バナナ会社の進出に伴い、マコンドの役人が変わった。そしてある日巡査部長が子供とその祖父を街で殺した事件をきっかけにアウレリャノ・ブエンディア大佐は、息子たちに銃を持たせて反乱を起こそうと決意する。しかし、その週のうちに大佐の17人の息子たちは灰の十字を真ん中を狙う何者かによって殺される。ある者は弾丸で、ある者は氷用の手鉤で殺され、アウレリャノ・アマドルだけは山奥に逃げ、生き延びる。
この事件を経て、アウレリャノ・ブエンディア大佐は、ウルスラが埋め隠した以上の金を集め、外国からの侵入者とそれに伴った腐敗とスキャンダルへの反乱を起こそうと、ヘリネルド・マルケス大佐を誘う。彼はアウレリャノ・ブエンディア大佐を一蹴する。

マコンドでは、たったひとりの人間さえ空高く運びあげられなかった。ジプシーの空飛ぶ絨毯をすでに知っているので、人びとはこの発明を時代遅れのしろものと思ったのだ。

ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』

第10部 – アウレリャノ・ブエンディア大佐死す

主な登場人物

ブエンディア家
ウルスラ・イグアラン(ウルスラ)
アウレリャノ・ブエンディア大佐(アウレリャノ①)
アラマンタ
レベーカ
サンタ・ソフィア・デ・ラ・ピアダ
ホセ・アルカディオ・セグンド(ホセ・アルカディオ④)
アウレリャノ・セグンド(アウレリャノ③)
フェルナンダ・デル=カルピオ
ホセ・アルカディオ(ホセ・アルカディオ⑤、法王見習い)
メメ(レナータ・レメディオス)

その他
ペトラ・コテス
ピラル・テルネラ
ヘリネルド・マルケス大佐
アントニオ・イザベル神父

あらすじ

ウルスラは失明するが、彼女が感覚を研ぎ澄まして以前と変わらぬよう振る舞うので周りは気づかない。失明したことで、逆に元気になったウルスラは忙しく働きながら、アウレリャノ・ブエンティア大佐が戦乱のために家族への愛情を失ったのではなく、そもそも人を愛したことがなく、子供やレメディオスさえへも愛していなかったことに気づく。
ウルスラがアウレリャノ・ブエンディア大佐を妊娠していた頃、彼女妊娠中に腹の中にいるにも関わらずあまりにもはっきりした泣き声を聞いたので、彼を「豚のしっぽ」と疑い、死産を望んだ。アウレリャノ・ブエンディア大佐は愛とは無縁に生まれ、のちに彼女はその時の泣き声を「愛の能力の欠如の明白なしるし」と悟る。
ホセ・アルカディオは神学校へ発つ。メメも修道学校へ行き始める。この頃、マコンドではバナナ熱は冷めたものの、昔の慣習が戻ることはなかった。家の中では、盲目のウルスラに代わって、フェルナンダが采配を振るようになる。ホセ・アルカディオ・セグンドはバナナ会社の監督になる。フェルナンダが采配を振るようになり、家が窮屈になったアウレリャノ・セグンドはペトラ・コテスの家に住み着き、ばか騒ぎをする。彼は<像おんな>との大食い勝負の中で死にかけ、家に帰る。
メメが修道学校の友達を72人連れてくる。トイレが混みすぎたために、72個のおまるを買い、生徒たちが去った後、フェルナンダはおまるをメルキアデスの部屋にしまう。
ヘリネルド・マルケス大佐に反乱を断られて以来、アウレリャノ・ブエンディア大佐は家に引きこもっており、魚の金細工を作るのもやめてしまった。やがて、用をたすために家の裏庭の栗の木に行く時以外は作業場にかんぬきを下ろして引きこもるようになる。ある日、街にやって来たサーカスを一目見、用を足しに栗の木へ向かうと、アウレリャノ・ブエンディア大佐は死ぬ。

なおもサーカスのことを考えながら大佐は栗の木のところへ行った。そして小便をしながら、なおもサーカスのことを考えようとしたが、もはやその記憶の痕跡すらなかった。ひよこのように首うなだれ、顔を栗の木の幹にあずけて、大佐はぴくりともしなくなった。

ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』

第11部 – マコンドの虐殺

主な登場人物

ブエンディア家
ウルスラ・イグアラン(ウルスラ)
アラマンタ
レベーカ
サンタ・ソフィア・デ・ラ・ピアダ
ホセ・アルカディオ・セグンド(ホセ・アルカディオ④)
アウレリャノ・セグンド(アウレリャノ③)
フェルナンダ・デル=カルピオ
ホセ・アルカディオ(ホセ・アルカディオ⑤、法王見習い)
メメ(レナータ・レメディオス)
アマランタ・ウルスラ
アウレリャノ・バビロニア

その他
ペトラ・コテス
ピラル・テルネラ
ヘリネルド・マルケス大佐
アントニオ・イザベル神父

あらすじ

フェルナンダとアウレリャノ・セグンドの間に、次女アマランタ・ウルスラが生まれる。メメはフェルナンダの厳しい家庭環境に嫌気がさし、自堕落なパーティに通うようになる。ある日、酒を飲んで帰って来たメメは、アマランタとフェルナンダにその憎しみを伝える。その後、二日酔いで病院に運ばれ落ち込んだメメを、アウレリャノ・セグンドが慰め、二人の交流が始まる。
今わかったのよ。わたし、ふたりをとっても愛しているんだわ。
アウレリャノ・セグンドはメメを連れ回し、ペトラ・コテスは嫉妬する。メメに、電流の走る金網の向こう側のアメリカ人の友達ができ、アメリカ人の青年に恋をする。
アマランタは四年前、死神に出会い、経かたびらを織るように、またそれを織り終えた時、安楽死すると伝えられる。彼女は織り終え、家族に今日死ぬと伝え、葬儀屋を呼び始め、自分で埋葬の準備をして死ぬ。その後、ウルスラが寝たきりになり始める。頭はボケておらず、メメの恋心を見破る。
以前、アメリカ人の友達を通じて、マコンド生まれでバナナ向上に勤める、メスティソの青年マウリシオ・バビロニアにメメは出会い、恋に落ちていた。映画館で二人がキスをしているところを見つけたフェルナンダはメメを家に連れ帰り、閉じ込める。フェルナンダは彼の肌の色が許せなかった。メメの周りに黄色い蛾がつきまとう。ある日、鳥泥棒と間違えられたマウリシオ・バビロニアは、メメに会いに家に来た時に発砲され、寝たきりとなる。マウリシオ・バビロニアが発砲された直後、メメはフェルナンダが育った修道院に送られる。
ホセ・アルカディオ・セグンドはバナナ会社の監督をやめ、労務者の味方としてストライキを起こし始める。ある日、メメとマウリシオ・バビロニアとのに産まれたアウレリャノ・バビロニアが尼僧によってフェルナンダのもとに届く。彼はアウレリャノ・ブエンディア大佐の昔の仕事場に閉じ込められ、その存在と出生の秘密は世間から隠される。
バナナ会社と労務者の間に大規模なストライキが起こる。暇を持て余した労働者が暇を持て余す中、治安確保のために軍隊がやってくる。争議の調停を行うため州の軍政司令官がやってくる。人々は出迎えるために駅に集まったが、一向に駅がこない。軍隊はスト参加者を射殺する許可を持っており、その場を去るよう呼びかける。ホセ・アルカディオ・セグンドは反抗するが、その瞬間機関銃が群衆に向かって放たれ、皆殺しにされる。ホセ・アルカディオ・セグンドは気絶し、目を覚ますと街の人々の死体を積んだ列車に乗せられていることに気づく。彼は列車を飛び降り、土砂降りの中マコンドに向かって歩き始める。
家に着いたホセ・アルカディオ・セグンドは、政府の発表によると、駅前の労務者は命令に従い、家に帰ったことになっている。協定調印をいつにするのか、という話になった途端雨が降り始め、バナナ会社のブラウン氏は晴れてからで良い、という。軍隊は夜中にスト参加者と組合の指導員を抹殺し、ホセ・アルカディオ・セグンドだけが生き残った、という話に変わっている。ある夜、軍隊がブエンディア家に押しかけ、ホセ・アルカディオ・セグンドはメルキアデスの部屋に隠れる。なぜか、その姿は軍人の目に映らない。ある軍人は魚の金細工をお土産にもらう。この日以来、ホセ・アルカディオ・セグンドはメルキアデスの羊皮紙を読み始める。

アウレリャノ・ブエンディア大佐は、この国の偉人の一人なんだから。

ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』

第12部 – 雨のマコンド

主な登場人物

ブエンディア家
ウルスラ・イグアラン(ウルスラ)
レベーカ
サンタ・ソフィア・デ・ラ・ピアダ
ホセ・アルカディオ・セグンド(ホセ・アルカディオ④)
アウレリャノ・セグンド(アウレリャノ③)
フェルナンダ・デル=カルピオ
ホセ・アルカディオ(ホセ・アルカディオ⑤、法王見習い)
アマランタ・ウルスラ
アウレリャノ・バビロニア

その他
ペトラ・コテス
ピラル・テルネラ
ヘリネルド・マルケス大佐
アントニオ・イザベル神父

あらすじ

ブラウン氏の宣言から四年十一カ月と二日、雨は降り続いた。
ある日、アウレリャノ・バビロニアが廊下に飛び出し、その存在が明らかになる。アウレリャノ・セグンドは孫を喜び、アマランタ・ウルスラと一緒に遊ぶ。アウレリャノ・セグンドは家に落ち着くようになる。
ヘリネルド・マルケス大佐が死に、葬儀が行われるが、大雨とぬかるんだ地面の中、牛舎が止まり助けを求める。そんな中、アウレリャノ・セグンドはペトラ・コテスを見かけ、家に行くが情事には年を取りすぎたことに気づかされる。ブエンディア家の食料が尽き、フェルナンダはアウレリャノ・セグンドに不満をぶちまける。ウルスラはボケ始め、ウルスラが隠した大金をみつけようとアウレリャノ・セグンドは躍起になる。掘り始めてから一年、雨が上がる。

魚がドアから奥へはいり込んであちこちの部屋を泳ぎまわり、窓から外へ抜けられるくらい、空気は水を含んでいた。

ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』

第13部 – 雨上がりのマコンド

主な登場人物

ブエンディア家
ウルスラ・イグアラン(ウルスラ)
レベーカ
サンタ・ソフィア・デ・ラ・ピアダ
ホセ・アルカディオ・セグンド(ホセ・アルカディオ④)
アウレリャノ・セグンド(アウレリャノ③)
フェルナンダ・デル=カルピオ
ホセ・アルカディオ(ホセ・アルカディオ⑤、法王見習い)
アマランタ・ウルスラ
アウレリャノ・バビロニア

その他
ペトラ・コテス
ピラル・テルネラ
アントニオ・イザベル神父
アウグスト・アンヘル神父

あらすじ

ペトラ・コテスとアウレリャノ・セグンドはフェルナンダの幸福のために、貧乏を我慢してお金を富くじの運営で稼ぎ、倹約する。法王見習いのホセ・アルカディオが帰ってくるという知らせが届き、アマランタ・ウルスラは私立学校に入学する。アウレリャノ・バビロニアは公立学校にも行かせてもらえない。ウルスラは過去と現在を混同し始めるようになる。
ウルスラが死に、方角を見失った小鳥たちが不審な大量死をする。アントニオ・イザベル神父が<さまよえるユダヤ人>と称する翼の切り落とされた子牛のような人間のような怪物が街で見つかり、罠にかかる。レベーカが死ぬ。アントニオ・イザベル神父は年齢による幻覚を教会関係者に疑われ、養老院に入れられる。
アウレリャノ・バビロニアが、バナナ会社が来るまでのマコンドは真っ当な発展をしていて、バナナ会社がマコンドを堕落させ、労務者を殺害して列車で運び、海へ捨てたという。アウレリャノ・セグンドとの間にも愛情が生まれ、読み書きとメルキアデスの羊皮紙の解読を彼に教える。アウレリャノ・セグンドはブエンディア家の財産を売って手に入れた学費と片道の切符で、アマランタ・ウルスラをブリュッセルに留学に行かせる。
ホセ・アルカディオ・セグンドが死ぬ。アウレリャノ・セグンドも死ぬために家に帰ってくる。棺桶に入った二人は、少年時代のようにそっくりで見分けがつかなくなった。彼らの仲間は、悲しみを紛らわせるための酒に酔って、どちらがどちらの棺桶か見失い、逆に埋める。

人びとの怠慢とは打って変わって、忘却は貪欲だった。

ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』

第14部 – ホセ・アルカディオ帰還、見つかるウルスラの金貨

主な登場人物

ブエンディア家
サンタ・ソフィア・デ・ラ・ピアダ
フェルナンダ・デル=カルピオ
ホセ・アルカディオ(ホセ・アルカディオ⑤、法王見習い)
アマランタ・ウルスラ
アウレリャノ・バビロニア

その他
ペトラ・コテス
ピラル・テルネラ
アウグスト・アンヘル神父

あらすじ

アウレリャノ・バビロニアはよく独り言を言うと思われていたが、実はアルキメデスと話していた。彼の助言で、アウレリャノ・バビロニアはサンタ・ソフィア・デ・ラ・ピアダに、羊皮紙の解読に必要なサンスクリット語の本を買うため、カタルーニャ生まれの学者の本屋へ行くようお願いする。
ペトラ・コテスが他人のふりをして、ブエンディア家に食べ物を毎週送る。人が減って屋敷の中が落ち着いた状況をふまえ、サンタ・ソフィア・デ・ラ・ピアダが家出する。アウレリャノ・バビロニアとフェルナンダは仲良くなるどころか、お互い気ままに生活し始める。フェルナンダはかつての女王の衣装を着て、女王になるためにこの街にやってきたことを思い出し、泣く。ある朝、彼女は女王の衣装を着たまま目を覚まさず死ぬ。
法王見習いのホセ・アルカディオが帰って来る。彼はローマについた直後、神学校をやめていたがウルスラが隠している大金をもらうために、フェルナンダに嘘をつき続けていた。彼は屋敷の物を売り払い、町の子供を屋敷に呼んでよく遊んでいた。ある日、彼はウルスラの寝室から彼女が埋めていた大金を見つける。彼はローマに戻らず、その金で豪遊する。
アウレリャノ・ブエンディア大佐の17人の息子の一人、アウレリャノ・アマドルが屋敷を尋ねるがホセ・アルカディオとアウレリャノ・バビロニアは彼を追い出し、彼は彼を何年も追い続けていた警官に、額の灰の十字を撃ち抜かれ死ぬ。ホセ・アルカディオは入浴中、よく遊んでいた四人の子供に溺死させられ、金貨を強奪される。アウレリャノ・バビロニアは彼への愛に気づく。

第15部 – マコンドの終焉

主な登場人物

ブエンディア家
アマランタ・ウルスラ
アウレリャノ・バビロニア

その他
ペトラ・コテス
ピラル・テルネラ
アウグスト・アンヘル神父
ガストン

あらすじ

アマランタ・ウルスラがベルギー人の夫ガストンとともに帰って来る。ガストンは一見まともに見えるが情熱家で、場所を選ばず愛し合った。マコンドでの生活が暇すぎたガストンはマコンドに航空便を開くことを思いつく。彼女が帰ったきてから、アウレリャノ・バビロニアは家の外に出て、街を歩くようになる。
アマランタ・ウルスラへの恋心を抑えられないアウレリャノ・バビロニアはニグロマンタという娼婦に出会い、恋仲になる。カタルーニャ生まれの学者の本屋で、ヘリネルド・マルケス大佐を曽祖父とするガブリエルをはじめとした4人の仲間ができる。
ある日、指を切ったアマランタ・ウルスラの血を、アウレリャノ・バビロニアはしゃぶりついて吸い始める。そのまま、彼は彼女の下着に顔を埋めて泣いたりしている、といった奇行を告白する。本屋の仲間とともに、彼はピラル・テルネラの娼館へ遊びに行く。そこで助言を受けたアウレリャノ・バビロニアは家へ戻り、アマランタ・ウルスラと体を重ねる。
ピラル・テルネラは死に、カタルーニャ生まれの学者は本屋を畳んで、地中海の村に帰る。四人の友達もそれぞれマコンドを去る。ガストンは飛行機を待ち疲れ、ブリュッセルに帰った。アウレリャノ・バビロニアはアマランタ・ウルスラは、裸で過ごすほど、愛に溺れる。
ガストンから突然帰宅の知らせが来るが、アウレリャノ無しには生きていけないと返事をし、ガストンはそれを認めるどころか彼らの幸せをきちんと祈った。ピラル・テルネラが死んだ頃、アマランタ・ウルスラは妊娠していた。アウレリャノ・バビロニアは自分の出生の謎を求め、教会に行くが、戸籍どころか歴史それ自体が変わっている。
ある日曜日の午後、赤ん坊が生まれ、アウレリャノと名付ける。彼には豚のしっぽが生えていた。アマランタは出産後、出血が止まらず死ぬ。やけになったアウレリャノ・バビロニアは二グロマンタの元に行き一晩過ごす。赤ん坊のことを思い出したアウレリャノ・バビロニアは家に帰るが、赤ん坊は死んで蟻に運ばれていった。
彼は、羊皮紙の解読を再開する。解読に成功し、自分の出生の秘密、ブエンディア家の歴史、予言を知り、読み終えると同時に、マコンドは嵐の中に消える。

ふくれ上がったまま干からびた皮袋のような死体が、石ころだらけの庭の小径を、賢明な蟻の大群によって運ばれていくところだった。アウレリャノは身じろぎもしなかった。それは、驚きのあまり体がすくんだというのではなかった。その素晴らしい一瞬に、メルキアデスの遺した最後の鍵が明らかになり、人間たちの時間と空間にぴたりとはめ込まれた羊皮紙の題辞が眼前に浮かんだからだ。<この一族の最初の者は樹につながれ、最後の者は蟻のむさぼろところとなる>

ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』

アウレリャノ・バビロニアが羊皮紙の解読を終えたまさにその瞬間に、この鏡の(すなわち蜃気楼の)町は風によってなぎ倒され、人間の記憶から消えることは明らかだったからだ。また、百年の孤独を運命付けられた家系は二度と地上に出現する機会を持ち得ないため、羊皮紙に記されている事柄のいっさいは、過去と未来を問わず、反復の可能性のないことが予想されたからである。

ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』

魔術的リアリズムと時の循環

『百年の孤独』最大の特徴は何と言っても、「魔術的リアリズム」。「魔術的リアリズム」とは、元々絵画で描かれる「冷静に現実を表現することによって現れる魔術的な非現実」だった。それがヨーロッパから帰国した作家の影響で、徐々にラテンアメリカ文学に流入し始め、それをガルシア・マルケスが大成したと言われている。南米って魔術的リアリズムの土壌がすでにあったんじゃないかとホドロフスキーの映画を見てると感じる。南米の暑苦しさは全てを幻想的に見せる魔法なのかもしれない。

「しばらくそのまま。これから、神の無限のお力の明らかな証拠をお目にかける」
そう言ってから、ミサの手伝いをした少年に一杯の湯気の立った濃いコーヒーを持ってこさせ、息もつかずに飲み干した。〜すると、ニカノル神父の体地面から十二センチほど浮き上がった。この方法は説得的だった。

ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』

かまどの鍋の牛乳がいっこうに沸かないのに不信をいだいたウルスラが蓋を持ち上げると、なかが蛆虫でいっぱいになっていた。

ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』

少したって、大工が棺桶を作るためにサイズをはかっていると、小さい黄色い花が雨のように降ってくるのが窓越しに見えた。それは、静かな嵐が襲ったように一晩じゅう町に降りそそいで、家々の屋根をおおい、戸をあかなくし、外で寝ていた家畜を窒息させた。あまりにも多くの花が空から降ったために、朝になってみると、表通りは織り目のつんだベッドカバーを敷きつめたようになっていて、葬式の行列を通すためにシャベルやレーキで掻き捨てなければならなかった。

ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』

こんな感じで魔法的なことが起きても、周りの人間は何事もなかったかのように淡々としてるというのが特徴、というかわかりやすく解釈するのにいいと思う。幻想的だ。

「百年の孤独」のもう一つの特徴的な叙述は「時の循環」。

長い歳月が過ぎて銃殺隊の前に立つはめになった時、恐らくアウレリャーノ・ブエンディア大佐は、父親に連れられて初めて氷という物を見に行った、遠い日の午後の事を思い出したに違いない。

ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』

この一文から始まり、要所要所に似たような文が登場してくる。その一つ一つが、ラストに明らかになる「物語全体の循環」を暗に示しながら物語が進んでいく。

コロンビアの歴史

ヘリネルド・マルケス大佐とアウレリャノ・ブエンティア大佐のやりとり

ア「ひとつ教えてくれ。何のためにきみは戦っているのかね?」
ヘ「何のためにってことはないだろう。もちろん偉大な自由党のためさ」
ア「幸福だよ、きみは。それがわかっているんだから。今のぼくは、自尊心のために戦っている、としか言いようがないんだ。」
ヘ「そんなことでは困るなぁ」
ア「それはそうだ。しかしこのほうが、まだましなんじゃないか、何のために戦っているのかわからないよりは。」
ア「あるいはきみのように、誰にとっても何の意味もないもののために戦うよりは」

ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』

スペインの植民地であった印象が強いコロンビアですが、1900年代以降アメリカの資本(劇中のバナナ工場)が流れ込み、労働者や農民と上流階級の貧富の差が広がる。それが物語でも登場する自由党対保守党の戦いを引き起こすこととなった。第二次大戦後、この争いは暴力を伴うようになり、軍部による政治介入や左翼ゲリラなど過激化して行くというのが「百年の孤独」が描かれた時代的背景だ。

終わりに

細かいことは置いておいて最高の文学作品だと思う。あらすじを書くだけで、途方もなく長いものになってしまう。しかし、この本の面白い部分はその細かい表現と、百年を圧縮した圧倒的な文章の海だ。この記事を導入として、ぜひ『百年の孤独』に挑戦していただきたいです。あらすじが頭に入っていれば、より表現を楽しめると思いますので。

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