本サイトでは”現役スポーツアナリスト”の「日々の学び」をブログとして書き残していきます。
自分の資料作成のバイブル的な本だ。この仕事をしていると、データやそれに伴うグラフ作成が多いのでいつもこの本を参考にしながら作成している。誰かにグラフの作り方とかを教わったことは特にない。
やはり社会人経験がないと自分の資料につっこみを入れてくれる人も少ないので、基準点が必要だ。特に数字周りをわかりやすく伝える際にはある程度、資料作りで意識しておかないとひっちゃかめっちゃかになりがち。だから資料作成のルールが大事になる。
数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う
有名な言葉だと思い。人の作る資料は常に疑ってかかるようにしている。
この言葉で個人的に怖いのは、数字は嘘をつかないが、そのストーリーによって人が誤解する、ということが往往にしてあることだ。すなわち、自分の資料が誤読されることがあると、間違った意思決定になる可能性があるので、なるべく意思決定前の資料はなるべくフラットな目線なものになるよう注意を払っている。
それは「探索的な」資料になりがちなので、どこまで「説明的な」資料にするのかは今でも日々試行錯誤しているのだが…
探索的・・・データから何かを見つける
説明的・・・データで何かを説明する
一応言葉の補足。
ということで、本書を読めば資料の「文法」を理解することができるので、資料は比較的読みやすくなると思う。
1. コンテキストを理解する
コンテキスト(文脈、背景)を理解することが先決。その説明として資料がある。コンテキストはいわゆる「ストーリー」と置き換えてもいいと思う。
我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか
の理解が必要に成る。
その資料作成の手順としてまず、ストーリーボードで概要を描くことで資料を作成する前にそのストーリーを明確にする。自分の場合、
・スライドのタイトルだけ埋めたものを作り、一連の流れをまず確認する
・メモにブレインストーミングする
のどちらかは必ず行うようにしている。
2. 相手に伝わりやすい表現を選ぶ
筆者は、
・点グラフ(散布図など)
・線グラフ(折れ線グラフなど)
・棒グラフ
・面積グラフ
を主に使用すると述べている。
よくありがちなダメな例がここでは大きく取り上げられていて、
例えばこういう例だ。80%前後を例にしているのはラグビー界でよくタックル%を比べるのにこういうグラフを見るから。ダメな点は棒グラフの基準値を0にしていないことにある。右がダメな例だ。棒グラフの高さは相対的なので、小さな差を読み手に誇張させる危険性がある。こういうグラフはメディアでもよく見かける。縦軸が意図的に細工されてるやつ。
そして、超大切なのが円グラフを使わないと言うこと。特に3Dで切り離されているタイプは最悪なものと言える。
まず何を比較してるのか、どれぐらい差があるのかよくわからない。
比較するときは常に棒グラフないしは線グラフで表現するよう心がけている。事実、僕がヘッドアナリストとして資料を作成したチームでは円グラフは一切使っていない。ただし、例外がある。
こんな風に比較対象が二つの時のみ例外的に使用する。あとは達成率のような実質二値分類になるもの。最近iWorkでドーナツグラフが導入されましたが、それも同様の使い方をしている。その他ダメな例が本書でけっこうな数取り上げられている。
3. 不必要な要素を取り除く
いらない部分をなるべく減らし、見せたい部分を明示することで「認知的負荷」を減らす。自分も人の多いミーティング等でたまに使う。
こんな感じ。データにもよるが、見せたいものに対して「視覚的秩序」を構成することが肝になる。ただ、誘導がかかってしまうので、あくまで「説明的」なデータの提示をするときだけだ。この辺りは4章の「相手の注意をひきつける」で無意識的視覚情報としても詳しく取り上げられているのでぜひ読んでください。
あとは文字を入れるときは全て左揃え、上からの順番にする。これ結構大切。理由はシンプルで人間の目は基本的に「左から右、上から下に」動くからだ。アラビア圏は例外でしょうけど、幸い僕らの多くは英語圏の人を相手にする。
4. デザイナーのように考える
読みにくいものは、行動に移すことも難しい
という言葉がでてくる。この言葉の通り、視覚的なアフォーダンスが重要になります。アフォーダンスとは
物が持つ形や色、材質などが、その物自体の扱い方を説明しているという考え方
だ。資料もそれ自体が読み方を示すようにできているものがよい資料となる。そのためにはまずタイトルが重要で、その次に中身に「Simple is better」が大切だと私は考えている。この本を読んでからユニバーサルデザインやアプリのUIとその導線等はかなり意識して接するようになった。知識は世界を見る眼鏡になる。
5. ストーリーを伝える
ここまではグラフの見せ方等の話だったが、全体の構成の話になる。
我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか
この話に帰着する。
我々はどこから来たのか = ストーリー(コンテクスト)の理解
我々は何者か = 問題や意思決定の必要性の提示
我々はどこへ行くのか = 行動、対策の呼びかけ
ここを明確にするために、スライドのタイトルから資料作成する方法を取る。場合によってはメモに書き出したものをスライドのタイトルに整理する。『ストーリーとしての競争戦略』から引用させてもらえば、資料の中の線の「強さ」「太さ」「長さ」のある資料にする必要がある。
終わりに
「数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う」
特に意思決定に関わる可能性があるときほど、その表現には注意を払いますし、意思決定者から「ストーリーをもってデータで誘導したい」とリクエストがくれば、そのようなグラフを作る。使い分けではあるのですが、データ分析にしても何にせよ「ストーリー」や「物語」のようなコンテクストが大切だ。また、人の資料を読むときは変なバイアスがかからないよう、常にグラフの「文法」は意識しないといけない。「知っていてやらないこと」と「知らなくてできないこと」は大きく違うと思う。これからも気をつけていかないといけない。
最後にアナリストとして気をつけている、大事にしている言葉を紹介する。
Where is the Life we have lost in living?
T.S.Eliot
Where is the wisdom we have lost in knowledge?
Where is the knowledge we have lost in information?