日々の学び:ダン アリエリー『予想どおりに不合理  行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』


行動経済学の流行を数年前に作ったとして、多くの書籍で引用されている一冊。そろそろ読まないといけないなと思ったので拝読。

人間の能力に畏怖の念を感じるのはたしかにもっともなことだが、人間の能力を心から感嘆することと、人間の理性が完璧だとか対することのあいだには、大きな違いがある。

ミクロ経済学等々で大前提となっている「人間は合理的に判断する」という前提をひたすら疑っていく。人間の認知と決断には自分たちが考えている以上に心理的な法則が働き、その一方で本人は「合理的な判断を下した」と感じてしまう。自分がバイアスなく判断を下し、また人に対して誘導をかけていくという意味で非常に興味深い内容であった。身近なところで言うと、例えば予算を獲得する際には本書で紹介されている「恣意の一貫性(アンカリングの類)」や「相対性による判断」というものは有効活用できるかもしれない。プロスペクト理論の実験であろう8章「高価な所有意識」も原典(有名にしたと言う文脈で)として読むと当時の衝撃は大きかっただろうと感じる。

マーケティングによる施策の源流につながる部分があるので、マーケ界隈の人も読んだ方がいい内容なのかもしれない。海外ビジネス書あるあるで、異常なまでに具体例と実験の話が多い。時間がない人は各部の最初二つのパートだけ読んで他は読み飛ばしても問題ないと思う。

大事にしすぎるほど後世大事にし、ほんとうの価値以上に高く評価するだろう。もっともありがちなのは、その思想を失うことに耐えきれず、なかなか手放せなくなることだ。その結果、残るものは何か。かたくなで柔軟性のないイデオロギーだ。

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