日々の学び:斉須政雄『調理場という戦場』


先日あるYouTubeを見た。

佐久間さんの本や色々な取材の中によく本書の名前が上がる。

コート・ドール」というフレンチレストランのオーナーが著者。「職人」であり続ける事、「職人を育てる」ことの両方について言語化されていた点が自分にとっては勉強になる部分だった。読み進めていくと、管理職に移っていくのではなくプレイヤーとしてあり続けるための心構えの話が佐久間さんの今に繋がる感じがあり興味深い。

フランスで修行した店ごとに経験と教訓を書いており、それがそのまま章になっている。自分が響いた部分を章ごとに残しておく。

フランス 一店目

経験と言っても、言葉にならない様な悔しい日々がたくさんあっただけ。〜すべてにいらだっていたこの頃のパワーが「若さ」だったような気がします。このいらだちを、まっすぐいつまでも持ち続けたいと、今も思う。

続けていれば、居眠りしながらでも今の仕事はできるようになるのです。毎日の習慣は恐ろしいものがありますよ。そして、「毎日やっている習慣を、他人はその人の人格として認めてくれる」という法則のようなものを、ぼくは、ずっとあとになって知ることになりました。

フランス 二店目

ちゃんとしたステージに上げられた時には自分の力を十分に出せる。だけど、ふだんはいつも無色透明。何でもない人から見ると、ほんとうに地味に見えることでしょうね。わかりやすいすごさを出したり、妙なオーラを出したりしようとはしない。権力で人を縛ろうとすることもない。
〜ふだんから普通の人のように振る舞っているから、見つめる人にしか本当のすごさはわからない。そういう実力を、最高の料理人は必ず持っています。そうありたい。昔も今も、いつも思っていることです。

フランス 三店目

大切なのは、簡潔であり、清潔であり、人間性があるということです。「整理整頓がなされていることは、仕事がきちんとなされるための基本なのだ」ということが、このお店に来てよくわかった。乱雑な厨房からは、乱雑な料理しか生まれない。大声でわめきたてる厨房からは、端正な料理は生まれない。
〜淡々と事を進める裏にひそむエネルギーを感じました。強靭な精神力に裏打ちされたしなやかさと言いますか。簡素なものでもきちんと手順を間違えなければ、品格と力強さが伴うのだということを、思い知らされました。

フランス 四店目

パワハラ搾取職場っぽかったので割愛。

フランス 五店目

昔は二十四時間どこにいても、いつも斉須政雄なんだという気持ちでやっていました。そしてそういう姿勢が必要だった。でも今は、ふつうのおじいさんでいる時間も多いです。「サービスが終わったら、そこらへんにいても誰だかわからない自分」もいいなぁと思っています。社会的な立場が上がれば上がるほどプライドを軽くしていないと、その下で働く人たちが酸欠状態になってしまいます。

フランス 六店目

あんまり効率のいい生き方をしていると、すり切れていってしまうような気がするんです。ですから、ゆっくりと遠回りでもいいけど、一歩ずつ行く事を選びました。

東京 コート・ドール

いつもプレイヤーでありたいと願っていました。強くもなく、弱くもなく、料理以外には逸脱していない。そんな人になりたかった。

理路整然とした人のほうが優れているというのは、うそっぱちだと思っています。現実に何かをしている最中には、何がどう引っくりかえるかわからないんですから。純粋なことだけ教えればすばらしい力を宿すかというと宿さないんです。

職人としての金言、「外国人」として異国で働く辛さなど勉強になる部分も共感できる部分も多くある内容だった。

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