日々の学び : フレデリック・ラルー『ティール組織』


本サイトでは”現役スポーツアナリスト”の「日々の学び」をブログとして書き残していきます。

今更だが、「ティール組織」を読んだので感想とまとめ。読み終えて調べてから気づいたのだが、原著は2014年に出版されてる笑 今更感がすごい。

フレデリック・ラルー

ベルギー出身。大学卒業後、マッキンゼーで務めた後コーチ/アドバイザーとして独立する。2014年に『Reinventing Organizations: A Guide to Creating Organizations Inspired by the Next Stage of Human Consciousness 』を出版。これが2018年に『ティール組織』として邦訳される。

原著のタイトルにあるように、人の意識ステージがティール組織を理解する上での肝となってくる。

組織モデルのパラダイムシフト – レッドからティールへ

『ティール組織』は組織構造のパラダイムシフトについて書かれた本である。企業における組織形態は人間の意識の発達段階に応じて進化を遂げてきたという。マルクス経済学の経済発展段階説に近い歴史の解釈から始まる。

日本でいうところの豪族と国が生まれた時のような「レッド」組織、封建主義的な「アンバー」組織、戦後から加速した実力主義の「オレンジ」組織、そしてオレンジに対するアンチテーゼとしての「グリーン」組織。そしてこの次の発展段階としての「ティール」組織。

ざっくり言うとこの図のような感じで表せるのだが、ティール組織だけは一言で説明するのが難しい。一言で言い切るなら、「社員全員が平等に意思決定権を持ち、組織の存在目的を達成するために組織自体が柔軟に変化する有機的な」組織だろうか。なんのこっちゃだと思うので、まとめていく。

内的な意思決定の基準

一生懸命取り組めば何にでもなりたいものになれると言われる時代にあって、これはコペルニクス展開である。「進化型(ティール)で行く」ことになると、人生の目標を設定して、どの方向に向かうべきかを決めるのではなく、人生を解放し、一体どのような人生を送りたいのかという内からの声に耳を傾けることを学ぶ。

人々は仕事・職業を通して自分自身ではない仮面としての「自分」を生きようとしていると筆者は言う。人々は愛や成功を追い求める仮面の中で、他人を責める気持ちや恥ずかしさといったエゴとそれを生み出す合理的な社会を生きなければならない。「ティール」組織ではそういった精神領域から解放され、仮面なしに(自分らしく)生きることを目指す。

「ワークライフ・バランス」とは自分と職場が切り離されている状況、つまり「ティール」のステージには「ワークライフ・バランス」ない。「ティール」組織では内的な意思決定の基準、「自分らしさを追い求める」ことに主眼が置かれた職場。自分自身でいられながら他人を受け入れる職場として機能するそうだ。

三つの突破口(ブレイクスルー)

組織が「ティール」組織へと変化・改革していくために必要な要素が3つある。

自主経営(セルフマネジメント)
全体性(ホールネス)
存在目的

自主経営(セルフマネジメント)

ピラミッド型の組織構造や役職に頼るのではなく、全員に平等に与えられた意思決定権を持って集団的知性を活用すること。

全体性(ホールネス)

組織として、情緒的・直感的・精神的な部分を無視して合理性を追求するのではなく、仮面としての職業ではなく「自分自身」として生きられる職場を追求すること。

存在目的

組織それ自体が生命と方向感を持って存在すること。「ティール」組織では創業者やメンバーが理念を押し付けるというより、組織全体が一つの有機的な生命体として存在目的を追求する。

細かい説明

人事や戦略策定といったいわゆる「上流」の仕事(スタッフ機能)をもつ人々を増やすほど、現場の社員は仕事に対するモチベーションを失いがちだ。「ティール」組織ではスタッフ機能を極力減らすことで、現場の社員が意思決定権を持つようにする。

スタッフ機能を減らすということは、「怠惰な労働者の監視」をやめて「信頼と責任」の上に人を育てて仕事を遂行する構造を作ることと言える。こうして自由と責任を得た人々や組織が、有機的に繋がることで臨機応変な対応をすることを可能にするわけ。

一方で「自由と責任」は全てを独断で決めれるわけではなく、多くの組織が「助言プロセス」というものを採用しているそうだ。「助言プロセス」とは意思決定に関わる関係者に必ず相談すること。最終的な意思決定権は本人にあっても、相談なしに独断で意思決定を行うことが「ティール」組織では悪とされる。それは経営者も含めてだ。(自主経営)

全員が「自由と責任」を持つ「ティール」組織では役職や職業といった社会的仮面ではなく、「自分自身」として仕事に打ち込める環境を作るそうだ。すなわち単に人を雇用するのではなく、一人一人の魂を尊重して弱さも含めたありのままを受け入れる組織。そうして人々は自分自身の内的世界と他人への理解を深めていく。ここに「ワークライフバランス」なんて考え方はない。(全体性)

社員全体が自主経営と全体性を持つと役職への出世欲といった合理性が消えていく。そして「ティール」組織の人々は「勝利」のためではなく、組織の「存在目的」と「自己実現」のために尽力すると。

ティール組織におけるリーダー像

「ティール」組織におけるCEOは「口出し」せずに、ただ「文化」を守ることが一番大切らしい。CEOが強烈なリーダーシップを発揮する必要も、ヒーローである必要もなく社員全員が現場でのヒーローになるわけだ。

個人的な欲を捨てることのロールモデルになることが求められる。常に

自主経営(セルフマネジメント)
全体性(ホールネス)
存在目的

の3要素が守られているか、自身の行動・発言がそれらを支えるのかを考えなければならない。

終わりに

このnoteを書きながら、そもそも原著が2014年に書かれていたというのを知ったのが一番の驚きだ。そろそろ「ティール」の次の段階の組織が生まれるだろう。色で言えば「ブルー」あたりかな。将来、スポーツ業界において「ティール」を試す指導者を見てみたい。厳格な上下関係と役職を作らなければ権威を維持できないのは悲しすぎる。

物事に対する見方を変えると、見ている物の方が変わる。

どんな問題も、それをつくり出したときの意識レベルのままでは解決できない

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